女性ヒーロー不遇のジンクスをぶっ飛ばした『ワンダーウーマン』が切り開いた新時代とは?

海外で記録的ヒットとなり、続編の制作も既に「サンディエゴ・コミコン2017」で発表されたこの夏一番の注目作『ワンダーウーマン』が、2017年8月25日に待望の日本公開となる。今作は、新たな女性ヒーロー像を打ち立てただけでなく、ハリウッドにとっても大きなターニング・ポイントとなるであろう重要な作品だ。今後、女性ヒーローや女性監督によるハリウッド作品が語られる際、「『ワンダーウーマン』以降」という表現を耳にするかもしれない。

1941年にコミックに初登場を果たしたワンダーウーマンは、今作が大成功を収めるまでずっと「女性解放」のメッセージを訴えて戦い続けてきた。その想いは、今作の監督パティ・ジェンキンスに「女性監督による実写映画としては史上最高のヒット」という栄誉を与え、女性ヒーロー不遇の時代に終止符を打った。

この記事では、『ワンダーウーマン』の成功に至るまで、このコミック・キャラクターがどのような戦いを経たのか、そしてワンダーウーマンが切り開いた新しい時代とはいかなるものかについて明らかにしたい。

ワンダーウーマン、女性解放の象徴

ワンダーウーマンがコミックに初登場したのは、1941年にまで遡る。人間界から隔離された女性だけで成るアマゾン族の女王で、不時着したパイロットスティーブ・トレバーと出会い、戦争終結のために島を発つという流れは映画にも引き継がれた。

ワンダーウーマンというキャラクターは、もちろん「スーパーマンやバットマンに肩を並べるほどに強力な女性ヒーロー、しかも美しい」といったコミック的アピール・ポイントも当時としては画期的だった。しかし、彼女がコミックを通じて訴え続けてきたメッセージは、女性の地位向上を呼びかけるものだ。
「男女平等」が叫ばれて久しいが、ワンダーウーマンがコミックに初登場した1941年当時のアメリカにおける男女の価値観がまだまだ発達していなかったことは、ワンダーウーマンことダイアナらアマゾン族がかつて奴隷であったことを顧みれば明白だろう。彼女らは、アフロディーテの救いによってたどり着いたパラダイス島で、男性支配を免れた女性だけの楽園文明を築く。女王ヒッポリタの娘ダイアナは、そこに不時着したアメリカ人パイロットのスティーブ・トレバーとの間に親交を深め、戦争終結を望んで共にアメリカに向かう。アマゾン族は、そしてワンダーウーマンというコミックは、アメリカの地を「男女平等を守る最後の砦」と考え、その希望をワンダーウーマンに託したのだ。なお映画では、パラダイス島を後にするダイアナとトレバーの向かう先はロンドンに変更となっている。

コミック、アニメ、ゲーム、そして映画『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』…、ワンダーウーマンはあらゆるメディアを通じて、強く自立した女性としての理想像を、長らく背負い続けてきた。その功績が認められ、2016年10月には国連より「女性の社会的地位向上を呼びかける名誉大使」にも任命された。実はこの任命は、後に「ありえないプロポーションをした不当に露出度の高い白人女性キャラクター」にこの名誉は相応しくないとの抗議があり、2ヶ月で解任となってしまうのだが、大使解任に落胆したファンらによって再起用を求める嘆願サイトが立ち上がるという動きも見せた。男女平等を望むワンダーウーマンは、コミックや映画を飛び出し、今や現実社会でもメッセージを届けるべく戦っているのだ。

映画監督は男性だけの仕事じゃない

『ワンダーウーマン』の魂は、女性監督のパティ・ジェンキンスによって映像化されることになった。しかし、この女性フィルムメーカーの起用に対して、当初は懐疑的な声があったのも事実だ。Hollywood Reporterは、ジェンキンスの起用を「ギャンブル」と表現している。

映画事業においては、ライバルとも言えるマーベルにリードを許してしまっていたDCコミックスにとって、『ワンダーウーマン』は絶対に成功させたい勝負作。今作はもともと大人気ドラマの『ブレイキング・バッド』や『ウォーキング・デッド』などを手がけるミシェル・マクラーレンを監督に迎えて進行していたが、2015年4月にマクラーレンがクリエイティブ面での相違を理由に降板。パティ・ジェンキンスはその引き継ぎとして起用されることになった。
パティ・ジェンキンスはいわゆる「ブロックバスター作品」における実績を持っておらず、第一作『モンスター』(2003)は制作費800万ドルのインディーズ作品だった。(それでも、この『モンスター』は大きな反響を呼び、ジェンキンスは主演のシャーリーズ・セロンと共に今作で数多くの賞を受賞した。)

最近のハリウッドでは、ジェンキンスのようにインディーズ作品で活躍する「大穴」フィルムメーカーに大作映画の監督を任せることも珍しくない。『GODZILLA ゴジラ』(2014)のギャレス・エドワーズ、『キングコング:髑髏島の巨神』(2016)のジョーダン・ボート・ロバーツ、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)のジョン・ワッツ、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)のタイカ・ワイティティなどは、突然の大抜擢によって大きな注目を浴びた。しかし、そのいずれもが男性であるということにも留意しておきたい。
Hollywood Reporterの調査(2017年1月発表)によると、2016年の興行収入上位250作品のうち、女性監督によるものはわずか7%。これは、1998年の調査時と変わらないということで、映画業界…、とりわけ映画監督という職業における女性進出がいかに進歩していないかを物語っているだろう。「特定の職業が男性のものだと信じられてきた長い歴史があるのは事実です。」同じくHollywood Reportのインタビューに、ジェンキンスは語っている。「でも、映画監督という仕事がそのうちの一つだったというのに驚いています。なぜなら、映画監督は女性にとってとてもナチュラルな仕事のように感じるからです。ある意味とても母性的で、様々なことに気を使う仕事ですから。」
ジェンキンスの起用が「ギャンブル」であったというなら…。全米公開を終えた現在となっては、その賭けは大正解であったことは明らかだ。全米では実写版『美女と野獣』に次いで2017年公開映画で第2位(2017年7月25日時点)のメガヒットを記録。女性監督による実写映画としては史上最高の興行成績を打ち立てている。『ワンダーウーマン』がいかに熱狂的支持を持って迎え入れられたかについては、こちらの記事に詳しい。

© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

女性ヒーローの時代が始まる

気鋭の女性監督パティ・ジェンキンスによる『ワンダーウーマン』の歴史的ヒットを受けて、映画業界における女性の地位向上は約束された。
とりわけ、アメコミ映画における女性ヒーローには受難の歴史があった。過去に公開された女性ヒーローの単独映画のいずれもヒットには至っておらず、その後到来する『ダークナイト』三部作やマーベル・シネマティック・ユニバースをはじめとするアメコミ映画ブームは主に男性ヒーローによって支えられた。

ワンダーウーマンは、『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』のクライマックスで強烈なデビューを果たすも、単作映画に向けての期待値は未知数だった。ワーナー社も慎重な姿勢を見せ、充てられた製作費はDCEU史上最低の約1億4,900万ドルであったと報じられている。

そんな苦境の弾丸を銀の腕輪ですべて弾き、大ヒットの記録を樹立したワンダーウーマンが切り開いたのは、新しい女性ヒーローの時代だ。彼女は、世界の平和を願って戦うのは男性だけの仕事ではないことを改めて明らかにした。今後のアメコミ映画においては、既に更なる女性ヒーローの作品が控えている。

ライバルのマーベルからは、『ルーム』(2015)でアカデミー主演女優賞を受賞したブリー・ラーソンによる『キャプテン・マーベル』が2019年に全米公開予定。キャプテン・マーベルはマーベルにおける最強クラスのパワーの持ち主で、ここでも『ワンダーウーマン』同様に女性監督であるアンナ・ボーデンが抜擢された。マーベル史上初の女性ヒーロー作品であり、初の女性監督作品となる。(ちなみに、『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス監督は、マーベル作品『マイティ・ソー ダーク・ワールド』(2013)を途中降板していた過去がある。)
さらにマーベルからは、ソニーによる『スパイダーマン』シリーズのスピンオフ企画として、女性傭兵のシルバーセーブルと女泥棒ブラックキャットを起用した『シルバーセーブル&ブラックキャット』の制作もアナウンスされている。監督はジーナ・プリンス=バイスウッドで、こちらもやはり女性監督作品となった。
またDCEUからは、『バットガール』が2018年より制作開始となることが「サンディエゴ・コミコン2017」で発表となり、ファンの間で早くも話題となっている。

少し話は脇道に逸れるが、女性ヒーローを主役としたアメコミ原作作品としては、2015年より放送されているTVドラマシリーズ『スーパーガール』も見逃せない。スーパーマンのいとこであるカーラ・ゾー=エル / カーラ・ダンバースの成長と活躍を描くこのドラマは、ヴィランとの戦いや事件解決に挑むスーパーガールのアクションだけでなく、メディア企業で働く主人公カーラの人間ドラマも見どころ。ボスでありキャットコー・メディアのCEOであるキャット・グラントは仕事の鬼のようなキャリア・ウーマンで、女性ならではのストイックな仕事観をカーラに指南する一幕には思わずハッとさせられる。カーラがふりまく愛嬌とキレの良いドラマ展開が好評を博し、2017年10月からはシーズン3の放送も予定、スーパーガールの物語はこれからも続いていく。

彼女たち女性ヒーローを取り巻く環境に、ワンダーウーマンは向かい風を呼び起こした。同時に、現代の世界に新たなるリーダーシップの姿を提示し、前時代的な偏見に会心の一撃を見舞ってくれたのだ。
「美しく、ぶっ飛ばす。」──アマゾン族の強く美しい女性ヒーローによる、コミック初登場時から今日までの76年に渡る戦いの集大成が、いよいよ日本でも公開される。

映画『ワンダーウーマン』は2017年8月25日(金)より全国ロードショー。Huluでは、主演のガル・ガドット、クリス・パイン、そしてパティ・ジェンキンス監督によるここでしか見られないインタビュー映像ほか、5種類のフィルムクリップ、TVスペシャル映像も公開中だ。

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