【ネタバレあり】『ブレードランナー2049』感想トーク ─ 前作のテーマはどう受け継がれていたか?

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35年の時を経て現代に蘇った、SF映画の伝説的作品『ブレードランナー』の続編『ブレードランナー2049』。この衝撃作を、前作からのファンはどう受け止め、そしてどう語るのか?

この記事では、『【予習】『ブレードランナー2049』を堪能せよ!空白の30年を埋める年表、伝説の前作3バージョンを大解説』でもご登場いただいた、ブレードランナーの大ファンであるえむえすさん、テツさん、映画アドバイザーのミヤザキタケルさんの御三方に、『2049』をじっくり語っていただいた。本編を鑑賞し終えたばかりの、熱気溢れるトークや考察を是非一緒にお楽しみいただきたい。

なお、この記事は『ブレードランナー2049』のラストシーンを含むネタバレ内容を含んでいる。まだ本編をご覧になっていない方は、必ず鑑賞後にお読み頂きたい。

この記事には、映画『ブレードランナー2049』のネタバレ内容が含まれています。

えむえすさん、ミヤザキタケルさん、テツさん

『ブレードランナー2049』鑑賞直後の印象は?

えむえすさん:まず一本の映画としてすごく観やすかった。極論を言ってしまうと、『ブレードランナー』は続きがなくてもいい映画なんです。謎を残しつつ、ファンで盛り上がっていれば楽しい、みたいな。その続編をあえて映画化したわけですよ。よくぞこんなに上手に仕上げていただけたなと。

テツさん:僕も『ブレードランナー2049』は大好きな映画になりました。特に映像の一枚一枚が凄い。IMAXの大きな画面でまた見直さなきゃ。

えむえすさん:出来れば最高の環境で観て欲しいですよね。オリジナル版の特撮映像が今時のCGに置き換わるのはどうだろうかと不安だったけど、当時のVFXを思わせる魅力がちゃんと生きていた。

ミヤザキタケルさん:僕は前作でユニコーンのシーンが残した謎に囚われていたんですが、『ブレードランナー2049』ではその答えも提示されていたし、前作の“自分を自分たらしめるものは何なのか”というテーマをちゃんと継承しながら、見事に地続きになっていた。前作の余白を埋めつつ、時代が進んでいることも示しつつ描いていて。

えむえすさん:そうそう、デッカード=レプリカント説にモヤモヤしている前作のファンは絶対に観に行くべきですよ。

ミヤザキタケルさん:前作ではあまり触れられていなかった“オフワールド”についても補足されていたのがよかったですよね。

えむえすさん:そうですね。”オフワールド”の文字は前回、背景の一部に登場したくらいのイメージしかないですから。

心に響いた『2049』名シーン

ミヤザキタケルさん:序盤のサッパーとの壁を使った戦闘シーンは、前作ラストのロイ・バッティとの戦いを彷彿させられましたね。前作を引き継いでいる感じが入りやすくて良かった。

えむえすさん:オープニングからして、もう素晴しかった。瞳が開いてスピナーが飛んでいく映像なんて、前作のオマージュですから。

ミヤザキタケルさん:僕は、Kがデッカードに会いに行って、少し追いかけっこした後にエルヴィス・プレスリーなど往年のスターがホログラムで登場するシーン、すごく良いなと思いました。大昔のプレスリーがいて、1982年のオリジナル版と2017年の『2049』を担うハリソン・フォードがいて、新たな主人公のライアン・ゴズリングがいて、そして今を生きる僕ら観客がいて。あのシーンには全てが揃っているんです。『ブレードランナー』を通じて全ての世代が繋がった感覚がありました。

テツさん:今回、光る傘が出てこなかったんですよね。透明なコートは出ていましたけど。

えむえすさん:ショーケース越しの娼婦も『ブレードランナー』らしくて良かったですね。前作を象徴する要素がたくさん出てきたのも嬉しかった。

ミヤザキタケルさん:フォークト=カンプフ検査も、デバイスがモバイル版みたいなのになってて。前作は大掛かりな装置でしたよね。時代が進んでるなって。

テツさん:前作でも、ロサンゼルスにはホログラム広告で巨大な女性が街に映し出されていたじゃないですか。でも『2049』のラスベカスで崩壊した女性の虚像が実物で登場したのはインパクトがありました。

えむえすさん:僕はスピナーの描き方に惹かれた。前作は舞台がほぼロサンゼルスだけだったからあまり移動しなかったけど、今作は移動手段としてスピナーが大活躍する。Kが乗り降りする度に引きの画でスピナーが描かれていて、スピナー好きにはたまらなかった。オモチャが欲しくなりますよね(笑)。

テツさん:スピナーを使い捨てにしないところ、ちゃんと監督はわかってますよね(笑)。

ミヤザキタケルさん:印象的だったのが、Kが人間に憧れているような行動を取るんですよね。ホログラムの彼女を作ったり、タバコを吸ったり、酒を飲んだり。どれもすごく人間臭いじゃないですか。もしかしたら、レプリカントはそんなことをしなくてもいいのかもしれない。けれど、人間でありたいという願いが行動に現れているような気がして。

デッカードはユニコーンの夢を見たけど、Kが得たのは木彫りの馬だった。角も何もない馬なんですよ。これって、Kには初めから希望が無いことを示していたんじゃないかな。

なぜラヴは涙を流したか

テツさん:ラヴがジョシ警部補を殺すシーンでラヴは涙を流していたけど、あれはなぜだろう。

えむえすさん:レプリカントにとって創造主たる人間を殺した時に何か感情が働くのかもしれない。それか、自分は完璧であると信じるラヴが、人間らしさを演出するために機能的に泣いていたのかも。

ミヤザキタケルさん:ジョシ警部補が、レプリカントのはずの部下Kをすごくかばうじゃないですか。ラヴはウォレスの指示通りに動くマシーンみたいな存在で、自分のことをそんなふうに大切に扱ってはくれない。ジョシ警部補のように、レプリカントを守ろうとする人間というのを目の当たりにして、自分にないものを見せつけられての涙だったのかな。

えむえすさん:なるほど…。何を持って人間とするのかというテーマ性が現れている涙だったのかもしれない。

ラストシーン、そしてその後…?

えむえすさん:『ブレードランナー』の魅力って、想像の余地が広がっていることだと思うんですけど、『2049』もそうだった。ラストシーンから先はどうなるだろう。レプリカントが戦争を起こしてしまうとして、その続きをやってしまったらブレードランナーがブレードランナーでなくなってしまう。いくらでも続きを作れるような余地は残しているけれど、できればこの続きは観たくないかも(笑)。

ミヤザキタケルさん:ラストシーンは解釈が分かれますよね。戦争に突入することもありえるし、Kがデッカードを逃がすこともあり得る。

テツさん:前作ラストで、デッカードがユニコーンの折り紙を拾い上げて、何かを納得したようなすごく良い顔をするんですよね。今回のラストも、Kが最後にいい顔をして終わる。2人の顔を是非よく観て欲しい(笑)。

えむえすさん:そうですね。2人のブレードランナーは見比べると味わい深い。今回のデッカードは前作を経て、悟りを開いたような領域にも達している。それに対するKの若さや青臭さを比較して観て欲しい。『ブレードランナー2049』はKとデッカード、2人の物語なので。

深奥なるテーマの継承

テツさん:ウォレスはレプリカントの繁殖を企んでいたけど、繁殖の場合人間と同じように成長を待たなくちゃいけないから、効率が悪くないですか?これまでと同じように初めから大人として製造するのと、どっちが早いんだろう。

えむえすさん:ねずみ算式に増えていけば、繁殖の方が良いのかも。ペースは遅いかもしれないけど…。
前作と同じリドリー・スコットが監督した『エイリアン:コヴェナント』でも、登場するアンドロイドが何も産み出せない存在であることに葛藤するんですよ。すごくオーバーラップしていて。ウォレスは労働力としてレプリカントが必要だとは言っていましたけど、ひとつの道具としてではなく種として創造して、神のような存在になりたかったのかも。

ミヤザキタケルさん:そのウォレスが盲目というのも深いなと。地位も名誉もある人間である彼に視力がないという設定も、人間とレプリカントのどちらが優れいているのかという命題を突きつけられているような気がします。

えむえすさん:前作のタイレル社長も、4年の短い寿命を全うするレプリカントを羨んでいるかのような発言をしていました。そう考えると、『ブレードランナー』って人間を多面的にとらえていますね。長生きすることが良いことなのか、短い時間でも一生懸命に生きるのが良いことなのか。そういうテーマもちゃんと『2049』に引き継がれていますね。

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映画『ブレードランナー 2049』は2017年10月27日より公開。Huluでは、第一作『ブレードランナー』のオリジナル版(字幕/吹替)、ディレクターズカット/最終版(字幕)、ファイナル·カット版(字幕/吹替)を配信中。さらに“2022年”に起こった大停電を描いた短編アニメーション『ブレードランナー ブラックアウト2022』と、9月27日(水)に開催された渡辺監督登壇イベントの模様も配信中だ。

『ブレードランナー』配信情報

『ブレードランナー』

オリジナル版(字幕/吹替)
ディレクターズカット/最終版(字幕)
ファイナル·カット版(字幕/吹替)
※権利上の都合により、一部字幕版と吹替版のバージョンが異なります。
URL : https://www.happyon.jp/blade-runner

『ブレードランナー 2049』 

予告編 配信中
URL : https://www.happyon.jp/blade-runner-2049

『ブレードランナー ブラックアウト2022』 

URL : https://www.happyon.jp/blade-runner-2049

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※この記事にご協力いただいた皆様

ミヤザキタケルさん:映画アドバイザー/ライターとして幅広く活躍。Instagramのフォロワーは1万2,900人を超え(2017年10月現在)、等身大の言葉で語る映画評が支持を集めている。Instagram

テツさん:SF映画とCYBERJAPANをこよなく愛する30代会社員。

えむえすさん:『ブレードランナー』の大ファン。今を生きる特撮オタク。